はじめに
虜人日記は太平洋戦争中に小松真一が体験した命懸けのドキュメント。
徴用され帰国するまで、1944年からの3年間にわたる体験を、フィリピンの米軍捕虜収容所内で、絵と文章で記録した戦争第一次史料である。
休日の第12労働キャンプ
日記はこんな雰囲気の中で描かれた
大部分の戦中の記録は、敗戦と同時に日本軍により意図的に焼却され、現存するのはごくわずか。
帰還の際、この日記は、日本の役人による理不尽な没収から逃れるため骨壷に隠し、持ち帰ることができた。
戦後の日本社会の大きな意識変化においても、加筆されたり修正されることもなく、銀行の金庫で保管されていた。30年後に真一が急逝。この日記は遺族により1974年、始めて陽の目を見る。
それが当時、社会的な影響力を持つ山本七平氏に届き、氏の渾身の評論以降、筑摩書房から出版され1975年に第29回・毎日出版文化賞を受ける。
さらに30年後『虜人日記』は、ちくま学芸文庫入りし、更に長く読み続けられるようになった。
真一の特殊な立場についても言及しておかなければなるまい。
真一は兵隊ではなく、ブタノールの先端技術者であった。特殊な軍属(民間人)として徴用され、軍の中枢近くにいて戦争を体験する。
外国からの輸入に大きく依存していた石油を対日制裁(※ABCD包囲網)によって断たれた日本。是が非でも、ガソリンの代わりに植物を蒸留発酵し製造するブタノールで代替せねばならなかった。
石油の備蓄が尽きれば、ブタノール無しでは飛行機も車も動かない。経済を維持し、戦争を続行するための重要戦略物資だったのだ。
1941年、太平洋戦争前、アメリカ(America), イギリス(Britain), 中国(China), Dutch(オランダ)が形成した対日・経済包囲網(各国の頭文字を取り「ABCD包囲網」)により、日本資産の凍結、対日石油の禁輸が実施される。
真一は東京農大で発酵蒸留を学び、卒業後大蔵省醸造試験場、農林省米国利用研究所で研究。そして台湾の台東製糖株式会社でブタノールの量産工業化を命ぜられる。
台東製糖(株)のブタノール生産工場建設
真一(右前列中央)
その実績を陸軍に買われ1944年台湾から日本に戻り、フィリピンの戦地に送られる。
時すでに、日本軍の敗色は日毎に濃くなっていた。
期間:1944年2月12日~’45年3月30日
命を受けてから戦地へ、退廃する日本軍、決死の島めぐり、爆撃下での活躍
真一達は、米軍や現地ゲリラからの攻撃を避けるため、椰子の葉でカモフラージュした海上機動部隊の船でフィリピンの島々を移動した。
・内地帰還、
海難
↓
・軍属拝命、
出発
Stage 2: 危機感の欠如したマニラに赴任
・マニラ印象、
軍管理事業部、
和知閣下の印象
↓
・文官、
武官
↓
・べビューホテルの生活
↓
・ブタノール工業中止
Stage 3: 決死のレイテ行き、島めぐり
・レイテ島へ
バコロド
セブ行き
レイテ島
↓
・オルモック
イピイル酒精工場
大編隊
↓
・セブに帰る・第二回セブ空襲
セブの街、灰となる
↓
・イロイロ行きの船い便乗、
マニラに帰る
Stage 4: 空爆、ゲリラ攻撃下のネグロス島で酒精生産にまい進
・レイテに敵上陸
ネグロス行き
コンソリの大空襲
河野少将
↓
・ロペス酒精工場、コンソリの爆撃に大破、
タリサイ工場でウィスキーの製造、
昭和二十年一月元旦
↓
・タリサイ酒精工場大爆撃
↓
・インフレーション、
タリサイ街道
↓
・レイテ島よりの漂流兵、
山岳戦の用意、
六航通ファブリカで椰子油を搾る
↓
・米軍ネグロス島に上陸
期間:1945年3月30日~9月1日
米軍上陸と同時に逃げ込んだ山岳ジャングルで、
投降まで爆撃・飢餓との闘い
十分な食料も地図もない中、5カ月間もの間、未開のジャングルで真一達はサバイブできるか!?
↓
・羽黒台の生活、
敵の攻撃、
日本軍の火力
↓
・山地自活、
食用野草の講習、
コンソリ峠
↓
・卑怯者、
切り込み隊、
攻防戦を高見の見物す
↓
・内閣総理大臣 鈴木貫太郎の放送、
羽黒台陣地死守、
軍医衛生兵の代用、
羽黒台退却
↓
・無名稜線の生活、
兵団参謀部勤務を命ぜらる、
現地自活研究指導班の誕生、
現地物資利用講習要旨、
現地自活建設隊の誕生
↓
・坪井隊追及行
↓
・地獄谷、
マンダラガン縦断路、
大和盆地へ、
芋蔓取りの切り込み隊
↓
・乾燥糧秣の製造、
蟹釣り、
行き倒れ
↓
・糧秣運搬、
追いはぎ、
河原の生活
↓
・蛙捕り、
電気イモとヘゴトロ、
燕を食う、
帰らぬ兵
↓
・ジャングにて敵の放送、
人肉を食う、
地獄谷、
食を求めて
↓
・大和盆地から御嶽山へ 登り口の絶壁
↓
・食糧あと1週間分となる
期間:1945年9月1日~’46年12月8日
敗戦と同時に捕虜となり、収容所内での生活。同胞そして米兵を観察、戦争と日本人自身を見つめ直す。
準備中
まとめ
この動画集では、「虜人日記」の書籍だけでは、イメージしにくいパートを一部をYouTube化しました。
さらに関心のある方は、「虜人日記」の全ページが収録される書籍も手に取っていただければ幸いです。